わが国の企業は、私が知る限りだが、その多くは一定の枠のな
かで仕事をさせていた。
枠から出ることを嫌う経営者が多いかった。
社員の立場からすれば、自由度がない。
あっても非常に限定的だ。
そもそもマネジメントは、トップダウン型になっていた。
枠を設けて結果が伴えば、トップダウ型のやり方は効率的だ。
中小企業は、この典型だ。
もっとも、結果が出せない企業は多い。
頭(頭脳)は経営者一人でよい型だ。
医師の和田秀樹さんは、日本企業の問題点とは何か、というこ
とに関して、次のようにコメントしていた。
『「前頭葉の萎縮が始まる40代以上が管理職の多数派を占めて
いるのは問題だ。前頭葉が老化すると意欲が低下し、環境の変
化に適応しにくくなるので、「前例踏襲」路線を選んでしまう
傾向が強くなる」という
感情のコントロールとは別の角度から見ても、日本人の前頭葉
はうまく機能していないように感じられます。私には、日本社
会そのものが「感情バカ」ならぬ「前頭葉バカ」になっている
ように思えてなりません。
前頭葉は感情のコントロール機能のほかにも、意欲、思考力、
集中力、創造性など多くの役割を担っています。これまでは、
それらの機能不全を高齢者の問題として語ってきました。
こうして振り返ってみると、高度経済成長期の日本は意欲、思
考力、創造性といった前頭葉の機能がフル回転していたように
思えます。しかし、それもバブル経済の崩壊とともに止まって
しまったのではないでしょうか』と記事にあった。
<一部抜粋>
私は、過去も同じ状況だった、と思っている。
ちなみに、私が転職したソニー子会社ですら、当時の管理職は
40代、50代だった。
和田氏がいう症状がみられていた。
違ったのは、会社に枠がなかったことだ。
私が師事した元社長は、東京通信工業時代に入社していたのだ
が、ソニーのマネジメントを体得していた。
この人だけが、若い人たちにチャンスを与えた。
まわりの管理職がああだ、こうだ言っても、この元社長が若い
人たちの企画を取り上げ、実行させてくれた。
一応、会社だから枠はあるのだが、極めてゆいる。
ゆるさを許容していた。
マネジメント風に言えば、ボトムアップ型なのだが、本で読ん
だようなものではない。
もっと人間的だ。
だからこそ、他社が真似できない。
私は、元社長の定年退職前の4年間しかいっしょに仕事をしな
かったのだが、実践で学べせてもらったし体得できた。
しかし、体得できたから私にできるのかといえば、人間がベー
スになっているだけに、元社長のようにやることはできないだ
ろう、と思っている。
今のソニーに、このような仕事のさせ方が残っているのか、私
にはわからない。
それだけに、この経験は、現在の中小企業やこれから上場しよ
うとする企業、あるいは上場しているのだが、チャレンジ精神
が希薄な企業にはもってこいだろう。
和田先生のコメントは正しいと思っているのだが、だからこそ、
その限界を破るやり方を、それぞれの企業は生み出す必要があ
る。
理論ではない、実践だ。
しかも、若い人間たちの挑戦欲に基づくものだった。
今の時代でも、コスパやタイパばかりを言う若者ばかりではな
いだろう。
失敗がある、効率が悪いこともある。
そこに、ゆるさと自由を許容する経営者がいた。
枠があって、枠がない。