今日の日本経済新聞にあった記事だ。
『「なぜ日本企業は我が社に任せないのか」。2000年代前半、
TSMC創業者の張忠謀(モリス・チャン)は、自前主義にこ
だわりTSMCへの委託をためらう日本の半導体経営者にいら
だちを隠さなかった。米国や欧州では半導体会社が設計開発
に専念し、TSMCの生産枠予約を奪い合っていた』
この言葉は、日本企業の経営者をよく表している。
高度経済成長期をうまくやってきた経営者や企業ほど、自社
に対する自負をもっていただろう。
水平分業の意識などない。
あるのは自社に対するプライドだけが、妙に強い。
いわゆる井の中の蛙状態なのだろうが。
1990年代はじめまでは、それでよかったのだが、その後
グローバル経済は、世界のなかで分業制を推進しはじめた。
バブルがはじけた後、わが国の企業では、強烈なコスト削減
経営へまい進するのだが、賃金上昇を抑え、借入金を減らし、
ひたすら原価低減を貫いてきた。
ところが、この間グローバル市場には大きな変化が起きてい
た。
米国の製造業を中心に設計・開発はおこなうのだが、製造は、
それぞれの生産に適した製造会社へ依頼するファンドリ型ビ
ジネスモデルが生まれていた。
ファウンドリ(Foundry)とは、自社工場を持たない「ファ
ブレス」企業が自社の製品の製造を外部の製造会社へ委託し
て製品化することだ。
例えば、半導体チップの製造などを専門的に行う企業だ。
具体的には、TSMCやサムスン電子に代表されるような微細
加工技術に巨額の設備投資を行い、グローバルに水平分業体
制(ファブレス+ファウンドリ)を担う企業だ。
わが国は、このようなグローバルな生産体制に大きく後れを
とった。
このため半導体をはじめ、これまでわが国支えてきた産業を
失うことになった。
私が知る限りでも、日本の経営者ほど自社に執着する人間は
いないだろう。
企業とは、あくま垂直統合型が当然だ、という考え方だ。
自社のノウハウが詰まった製品を他社に製造委託するという
考え方がない。
このようなことはありえない、と考えていた節がある。
弱い下請け企業を率いていくのは得意なのだが、自社のビジ
ネスを横展開(水平展開)することは苦手だ。
プライドが許さないのだろう。
その結果が、今の日本経済だ。
垂直統合型では、そもそも、グローバル市場を制覇するボリ
ュームゾーンに限界がある。
常に、わが国の市場が中心になるからだ。
ソニーですら2026年3月末、テレビ事業(BRAVIA)を中国
の家電大手TCLグループとの合弁会社へ2027年4月に移管し、
連結対象から外すと発表した。TCLが51%、ソニーが49%を
出資し、実質的に中国主導の体制となる。
「ソニー」「ブラビア」ブランドは維持されるようだ。
これなど垂直統合型の日本の製造業の敗北をみているのだが、
本来、水平分業型で開発をソニーが担い、製造を海外へ委託
していれば、違った事業展開ができたのかもわからない。
もっとも、ソニーは2000年代に家電を捨てる選択をして
いたからこそ、現在の好業績がある。
いつまでもコモディティ化したテレビ事業にしがみついても、
船井電機と同じ道をたどることになるだろう。
だが半導体では違った展開になったと思われる。
1980年代に世界を席巻したため、グローバル市場の展開
を見誤っていた。
日本の社長ほど偉そうにしている国もないだろう。
その態度が、日本の産業危機を呼び込んでいる、と私は思っ
ている。
これから自動車産業も、この波に飲み込まれていく。
中国の自動車産業が勃興してきたからだ。
中国市場で販売台数を伸ばしていくためには、これから日本
が自動車版TSMCとなるか、あるいは日本の自動車産業が優
秀な自動車を開発し、製造を中国に委託できるかの勝負だ。
かならずどちらかの選択をしていく日がくるだろう。
中国の次には、インドが台頭してくる。
鉄は国家なりから自動車は国家なりとなった。
次に国家となる産業は、残念だがわが国にはない。
だからこそ、中小企業にチャンスが巡ってくる。
国家となる産業はいらないのだが、高付加価値の製品やサー
ビスは必須だ。