わが国は高度経済成長期の成功体験を長くもっていた。
その成長が止まったショックなのか、経済成長が止まってから
は、国内のデフレの期間は長くなり、それを維持できたのは安
い賃金と非正規雇用者の増加だった。
さらに下請けをたたきコスト削減をおこないながら、大手企業
は輸出を拡大してきた。
その結果が内部留保の増大だ。
このように国民を犠牲にしたり、あるいは下請け企業からの搾
取によって獲得したGDPは、国内経済に恩恵をもたらさなかっ
た。
国内消費は上がらず、国内における商品価格は、長く低価格を
維持するしかなかった。
この時代、国内に販売をしていた企業の利益は少なかっただろ
う。国内投資は進むことなく、あらゆる分野で輸入は増えてい
く、当然、貿易収支は赤字に陥った。
それでも近年は、自動車や半導体の輸出が増え赤字幅は減って
はいる。
自動車や半導体の輸出が活発な割には、それ以外の産業は低調
だ。しかも、国内で消費するための原材料や農産物などの輸入
は増えていくばかりだ。
本来であれば、国内における賃金の上昇や下請け企業の増益が
あれば、国内でも消費は拡大し、設備投資は増えていっただろ
う。
日本にはこの循環がない。
内需主導型経済と長く言われてきたが、輸出主導型の経済は惰
性のように続いてきた。
これも過去の流れを抜本的に変えることができないわが国の文
化だろう。
大手企業による横並びの意思決定、つまり内部留保を増大する
経営では、国内における経済活動は低調になるに決まっている。
きょうの日経新聞の記事のなかで、ノーベル賞学者のポール・
サミュエルソン教授が述べていたことだ。
『「私のようなエコノミストたちは何年も前から、日本が自らの
意思で円を秩序だった方法で切り上げるべきだと勧告してきた」
「私は日本の産業界がこれまで夢の世界に住んでいたのではな
いかと思う。一つの市場が、たとえそれが米国市場のように巨
大なものであっても、日本の経済的奇跡が世界中にまき散らし
ている膨大な輸出増加を吸収できるとは、事情に通じた人間な
らだれも期待しないであろう」
石油危機に財政負担は万能ではない。高市首相は「責任ある積
極財政」をどう運用するのかを市場に丁寧に説明をする必要が
ある。食料品の消費税率をゼロにすることが本当に必要かどう
かも見極めた方がいいだろう』
私は、サミュエルソン氏の発言は、とくに日本の大手輸出企業
のことをいっているのだろう、と思ったとした。
要は、政策的な円安を利用し、海外で安い価格の製品を、その
国の需要を超えて販売することで儲けを出してきたのだ、と言
うわけだ。
しかも、利益は賃金は国内の従業員には向かわず、巨額な内部
留保となった。
賃金を上げない、投資はしない、下請けからは搾取し、そして
内部留保の一部で自己株式は取得する。
日本の経営者は、無能といえるのではないだろうか。
サミュエルソン氏の言葉は、こんな日本の経営者や政治家に向
けられている。
中小企業の輸出モデルは、大手企業のモデルと同じであっては
ならない。
付加価値があり、海外から求められるものが必須だ。
さらに付加科価値に対応する相応な販売価格であることが求め
られる。しかも、稼いだ利益は、適正な労働分配でなければな
らない。
円高にするといっても、原油や原材料を海外に依存するわが国
は、そうそう簡単に円高に戻す力は残っていない。
むしろ、引き続き円安は継続していくだろう。
本来であれば、大手企業がやっておかなければならなかったつ
けを、また国民や中小企業が負わなければならないのだ。
日本が自らの意思で円を秩序だった方法で切り上げるべきだ、
という意味の背景には、大手企業は国内投資を増やし、国内消
費を活発にすることができるような賃上げと下請け企業に対す
る適正な発注額が前提になる、と言える。
簡単に言えば、適正な労働分配率と下請け企業への適正な発注
額が前提となるのだが、いわば大手企業の収益構造は厳しくな
るのだが、それこそがグローバル競争の原則だ、といわれてい
るのだ。
政府にも課題がある。
これまでのように大手輸出企業だけに頼ってGDPを増やす政策
をおこなっても、国内の消費が増えず、投資も活発におこなわ
れない国では、国力が衰退していくことは明白だ。
投資すべき課題はみえている。
まず、国は国内投資を、なにを重点にするかだけだ。
時間はかかるがやらなければならない。