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経営環境

中小企業の活躍がなければ、わが国のGDPは増加しないだろう

私自身の昭和の労働は、長時間労働だったが残業代がでない
営業職だったため給与は低かった。こんな環境で10年もの間、
自分でもよく働いたと思う。
働くことに多くの不満があった。
辞めることばかり考えていた。
実際、転職活動をしていたが、営業職から事務職への転職は
不可能に近かった。
この会社では、営業職は「事業場外のみなし労働時間制」を
導入していた。今では、この制度であっても時間外労働にお
いて一定の要件で残業代の支給が必要になっている。
私の時代は、ほんとうにタダ働きだった。
早朝から夜遅くまで営業活動をした。

もっとも、私だけが長時間労働していたわけではない。
多くの企業の従業員が猛烈に働いていた。
私と違い、多くの企業の社員は、毎年給与が上がっていた。
まさに経済の高度成長時代だった。
私の場合、皮肉にもバブルがはじけた1990年にソニーの子会
社へ入り、その後、ソニーの成長に合わせて給与は急上昇し
ていった。
勿論、事務職だったので時間外労働や休日労働をおこなえば、
それに対応した賃金が支給された。私の場合、総務、人事の
立ち上げ仕事だったことから月間40~60時間くらい時間外労
働と休日労働をおこなっていた。営業時代同様、長時間労働
だったが、時間外や休日労働の賃金分は確実に上昇した。

こんな時代背景を理解するには、約30年前(1990年)におけ
る労働者一人あたりの平均労働時間をみておくことが必要だ
ろうか。
OECDデータによれば、この時代の日本人労働者の1年間の平
均労働時間は2,031時間とある。私の場合、1990年~1992年
ごろは年間2,300時間くらい働いていただろう。
アメリカは1,764時間、イギリスは1,618時間なので、日本は
それらの国々よりも250時間以上多く働いていたことになる。
この時代、日本人一人あたりの名目GDPは約25,895ドルで、
アメリカの23,847ドルやイギリスの20,854ドルを上回ってい
た。他方、2020年には、日本人一人あたりの名目GDPは40,
088ドルであり、これはアメリカの63,358ドルやイギリスの
40,394ドルを下回っている。

今、日本・アメリカ・イギリスにおける年間の平均労働時間
(労働者一人あたり)は、日本が1,558時間、イギリスは1,3
67時間だが、アメリカは1,731時間であり、アメリカの平均労
働時間は1990年頃とあまり変わっていない。日本の平均労働
時間が1990年以降に急激に減少しいる。
現状ではアメリカの方が日本よりも170時間長くなっている。

2024年の日本の 一人あたりの G D Pは世界 38位で、O E C D
加盟 38カ国の中では 24位です。アジア圏では、シンガポール、
カタール、マカオ、香港’アラブ首長国連邦、韓国、台湾が、
日本よりも上位にランクされている。上位の国は、1位ルクセ
ンブルク、 2位アイルランド、 3位スイスなどヨーロッパの小
国で占められている。

バブル経済を謳歌していたさなかの1980年代、日本人一人あ
たりの G D Pは世界 8位で、アメリカやイギリス、フランス、
ドイツなど欧米の大国より上位にランクされていた。
1990年代は、バブル崩壊後の低成長にあえいでいたが、それ
でも 一人あたりのG D Pはおおむね上位 5位以内で推移し、
2000年には 2位までランクを上げた。
しかし、 21世紀に入った途端、ランクは急落していく。
2003年には11位でトップ10を外れ、2000年代は、だいたい
10位くらいで推移しますが、2006年に22位となり、一時上
位の20位圏からも脱落した。
2010年代に入ると2013年27位に沈んで以降、20位台の常連
国となり、2023年には33位に順位を落としている。
結論から言えば、日本は世界のなかで貧しくなった。
日本の地位は、私が現役で働いていた時代とはまったく違っ
た世界になっている。

現政権が労働時間規制を緩和するのでないかという話がでて
いるが、労働時間の規制を緩和しても昭和の時代のようにG
DPは増えない。
理由は、国内の産業構造が大きく変化したからだ。
もちろん、一部業種では、とくに国内のサービス業や宿泊業
では効果はあるだろうが、製造業では労働時間の規制緩和が
おこなわれても、事業は水平分業されており、国内のGDP
が増加することはないだろう。
正社員の賃金が増えれば、非正規社員の賃金が減少するとい
うトレードオフの関係となる。

GDPが増えない本質は、付加価値が低い生産活動が多く、ま
た大手企業が稼ぎだした利益が内部留保され、賃金の大幅
な上昇があり国内消費が増えていかなければ、わが国の一人
あたりのGDPが、これからも増えることはないだろう。
現状は、むしろ物価の高騰で益々実質賃金が下がっている。
国内の消費に勢いはない。
日本の現状は、人口減少を含めて、まさに衰退していく道の
なかにある。残念ながら、中小企業だけでなく、大手企業を
含めて覚悟が必要な時代になった。

中小企業の経営とは現実を知ることだ。
世界のなかの日本の地位は低くなるばかりだが、その地位を
知り、その現実のなかからしか事業の発展はない。
中小企業が世界に打ってでる意味もそこにある。
日本国内で生産し、そして海外で勝負していく努力が求めら
れる。
日沈む国では、中小企業の活躍が未来を創る。
決して大手企業ではない。
付加価値がある製品やサービスなどの販売は、国内だけでな
く、海外で販売していていかなければ、わが国のGDPは増加
しない。
中小企業の役割は、これから益々大きくなる。
国内だけに目を向けていては、必然的に淘汰の波に飲み込ま
れてしまう。
創業経営者の真価が問われる時代がきた。

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