私は、アベノミクスを評価していた。
ただし、問題があった。
ひとつは、政策途上で消費税を上げたこと。
二つ目は、大手企業によって利益を持ち逃げされたことだ。
安倍元首相は、大手企業の好業績は当然だ、との自信をもっ
ていたのだろう。
2013年9月、米ニューヨーク証券取引所で投資家を前に「バ
イ・マイ・アベノミクス」(アベノミクスは買いだ)とスピー
チしたからだ。
その後、円安は、大手企業の業績を上げていったが、反面、
原材料費や燃料の高騰などの副作用をもたらした。
さらに賃金の大幅な上昇はなく、非正規雇用が増加しただけ
だった。
先日、デービッド・アトキンソンさんのコメントを読んだ。
現実は、この通りになってしまった。
わかりやすいグラフがあったので掲載する。
この図からわかるように国がおこなう政策は、民間企業に実
行を委ねる分野がある。とくに設備投資や賃金アップだ。
しかし、わが国の経営者は、どの時代でも同じようなのだが、
横並びの経営をやってしまう。
どこかの企業が抜け駆けして賃金が上昇しないように調整さ
れていく。
上の図からいかに企業が稼いだ利益が賃金へ移行していない
かがよくわかる。非正規雇用は、経済環境が改善されるとと
もに増加していったが、正社員の賃金は思いのほか上昇しな
かった。むしろ社会保険料などは、この間引き上げられてき
た。消費税も、この間に上がり、国民の実質賃金は上がらず、
むしろ可処分所得は少なくなっていった。
国がおこなう政策は、国内における賃金上昇によって個人消
費が増えて国内における企業活動が活発になることを予想し
ていただろう。
現実は、投資がおこなわれず、賃金も上昇しないわけだらか
国内経済がよくなるはずはない。
上場企業の増益によって、株価だけが、実態経済とは乖離し
て上昇していった。
まさに「バイ・マイ・アベノミクス」だった。
ここ数年やっと賃金アップができてきたのだが、大手企業を
中心にしたものだ。しかし、物価が高騰したために実質賃金
は上がらい状況が続いている。
そこへトランプ関税だ。
大手企業では、黒字リストラでまた横並び行動をはじめてい
る。どこまでも利益を確保する算段だ。
若い社員の高賃金と引き換えに、中高年社員はリストラによ
る切り捨てだ。
資本主義経済を、まるで劇場で観ているようなものだ。
さらに、大手企業は強欲さを増していくだろう。
人に対する投資ができるのは、中小企業になりそうだ。
大手企業に任せていれば、人的投資よりもコスト削減による
利益確保に走るのは十分予測されることだ。
大企業ほど将来のことよりも、今を生きる。
人口が減少する社会だ、世界経済も不安定化してきた。
大企業ほど守りの経営へ移行するだろう。
昨日、読売新聞オンラインに『日本の名目国内総生産(GD
P)が2026年にインドに抜かれて世界5位となり、30
年には英国にも抜かれて世界6位に下がる見込みとなった。
国際通貨基金(IMF)が14日発表した最新の世界経済見
通しで明らかになった。世界5位となる時期は24年4月の
公表時には25年としており、今回1年後となった。
IMFの推計によると、日本の名目GDPは26年時点で4
兆4636億ドル、30年時点で5兆1198億ドルとなる。
高成長が続くインドは26年時点で4兆5056億ドルとな
って日本を抜き、29年にはドイツも抜いて世界3位に浮上
する見通しだ。英国は30年時点で5兆1997億ドルと見
込まれ、日本を抜いて世界5位となる。
IMFは26年以降、物価変動を除いたインドの実質経済成
長率が年6%台で続き、英国は1%台半ばで推移すると推計
した。日本は0・5~0・6%にとどまるとしている。
日本の名目GDPは23年にドイツに抜かれて4位に転落し
た。名目GDPは、物価の上昇率や為替相場で左右される』
という記事が掲載されていた。
現状の日本企業の経営が続けば、間違いなく上記記事の現実
に直面するだろう。
政治は流動化し、とくに大手企業が自社の利益確保だけしか
考えなければ、わが国の経済が縮小していくのは当然の帰結
だろう。
中小企業のなかから新たな未来を切り開く企業の出現が必要
な意味は、こんな現実にある。
中小企業こそが、人的投資を可能とする場になるからだ。
なにも先端産業だけが、未来を創るわけではない。
わが国は別だが、世界の人口はまだ増加している。
やるべき課題は山積している。
わが国でも身近にやるべき課題はたくさんある。
政治が主導しても過去の積み上げだけでは、この現実が変わ
ることはない。
スポーツの世界が変わってきたのは、世界へ挑戦したことだ。
そのなかで考え抜き、鍛えぬいた人間の存在があるからだ。
いかに技術が発達しても、人間に投資する以外に現実は変わ
らない。社会は、人間がつくっているからだ。
政治に頼っていては、未来を創造できる企業はでないだろう。
中小企業は、あくまで独立自尊だ。
*このコメントは、noteと共有しています。