わが国の大手企業は、終身雇用制度(幻想なのだが)の上に
成り立っていたことから、経営者は、だいたい経営のプロで
はない。内部昇格者がボードメンバーになる。
このよいところは、企業の内部情報に通じ、しかも人的つな
がりが強く、強力なマネジメントを可能としたことだ。
しかし、社長人事や内部の決定事項に関して代表取締役の権
限は強く、独善的な経営になりやすく、実際、そのようにな
ったケースを多く見る。
このような経営スタイルは、いわば中小企業の経営と同じだ。
大手企業の経営者は、まるで自分がオーナーであるかのよう
にふるまっていた。
株式会社の取締役は、本来、株主総会に議案を提案して総会
の決議を経て決定されるのだが、その多くは、代表取締役に
よってボードメンバーが決められており、株主総会は形骸化
している。
近時は、外部の機関投資家が積極的に株主総会で異議を唱え
たり、自ら議案を提出するケースもでてきたが、現実は、今
だ社長の権限は強い。いく分変わってはきているが、プロ経
営者といわれる人たちは、外資系企業ではスタンダードのよ
うだが、日本企業ではまだ少数派だ。
このようなマネジメントは、プロの経営者を育てることはな
いが、中小企業のように、これから事業を成長させていく場
合、広く社内の現状を把握して、事業を成長させるための改
善と改革をおこなう場合は適している。
中小企業の経営者からすれば、傍らでサポートしてくれる大
手企業出身の人材が必要だ。
しかも、できるだけ大手企業の現場で鍛えられた人材がよい。
現場を知るとともに、現場の人間と進んでコミュニケーショ
ンできるからだ。
比較的多くみるケースは、取引銀行から人材を得ていること
だ。銀行との取引関係によって人材を得ているが、どちらか
と言えば、銀行側から押し込まれた人材ではないだろうか。
ほとんどが管理部門の部長などをしているようだ。
この手の人材は数字に強いが社内改革に不向きだ。
銀行交渉などは強いが、社内の問題や課題といった本質をみ
ることができないないし、わかっていてもやろうとしない。
銀行とは、そのようなところだからだ。
とくに製造業における現場を直接体現することがなく、業務
改善や社内改革をおこなうことにはむいていない。
サービス業でもむずかしいのかもわからない。
中小企業ほど、現場との対話は大事だ。
また、現場が近いのが中小企業の特徴だ。
すぐに問題点や改善点を把握でき、必要なアクションが起こ
せる。大手企業出身者からみれば、足りないことばかりだ。
それらができれば、現場の人間を巻き込みながら実行してい
くことで、事業の成長と拡大ができる。
厚生労働省の調査では『正社員以外の労働者を活用する理由
(複数回答)をみると、「正社員を確保できないため」が
41.0%(前回38.1%)と最も高い』あり、正社員を雇用する
ことさへむずかしくなっているようだが、ここにも知恵がい
る。やり方はいくらでもある。
経営とは、常に長い時間軸で考えていくものだ。
付け焼き刃の対応すれば、それだけの結果しか生まない。
これが現実だ。
とかく中小企業は短期志向だ。
長期志向に転換させるために大手企業出身の人材を活用する
ことだ。
このとき大切なことは、お金の話をしない人間を採用するこ
とだ。お金で入社した人間は、お金で去る。
私が知りえた事実だ。
お金の時代だからこそ、お金の話は必要ない。
いつの時代でも志が高い人間は、金では動かない。
むずかしい挑戦だからこそ、次を切り開いていける。
あなたは、志が高い経営者ですか、と問いたい。
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