大企業の新規事業が失敗するのは、組織として新たな事業を
はじめようとすることだ。だいたい誰の頭のなかにも新たな
事業の構想がない。優秀な人材は多いが、個人の構想力がな
ければ新たな事業は育っていかない。
私が在籍したソニー子会社は、創業時、二人の人間が構想力
をもっていた。それにソニーのベンチャー時代を生き抜いた
社長のマネジメントが合わさって事業は成長していった。
ソニー本体ではなく、傍流企業からでた新規事業だった。プ
ランがあればやらせるのがソニーだ。2億円を出資してもら
って事業はスタートした。
ソニーというところは、大企業にしては制約が極めて少なく、
社員の自由度が高い。大手企業でもやれるのだが、他の企業
がなぜやらないか、といえば、社員にリスクをとる気概がな
いことが多いのだろう。減点主義では、そもそもリスクは取
りたくないものだ。なにも自分を犠牲にして新たなことに挑
戦することはない、と思うのだろう。失敗すれば、今のポジ
ションを失う恐怖のほうが強い、と想像される。
ベンチャー経営者との違いは、フリーハンドで自分の絵が書
けるかだ。リスクを怖がるより挑戦する意欲が高い人間の存
在があるだけだ。大企業でもやればできるのだが、なぜか、
わが国では凡庸な人間が出世する。そして凡庸な組織となり、
誰もリスクを取らない。その結果、現在のような早期退職が
繁盛する時代をつくる。
大きな組織というところは、しがらみだらけで身動きが取れ
ないことが多く、大胆な挑戦はしないところでもある。どこ
かの総裁選をみても同じだ。挑戦よりしがらみだ。組織が衰
退していく過程は、企業と同じだ。まわりには、そんな大企
業の衰退を横目にベンチャーが台頭している。自分を主張し、
フリーハンドで自分の構想を実現していけるからだ。
人間と組織の構造がよくわかるのが今の時代だ。ベンチャー
とはやりたいことが明確だ。