政府は「賃上げは成長戦略の要」と位置づけている。賃金は、
人手不足や最低賃金の改定とともに継続的に上昇するだろう。
中小企業庁の資料では、中小企業の価格転嫁は進みつつある
が、対応の継続が必要である、と報告されている。
企業規模による価格転嫁の差異については、労務費や原材料
費の販売価格への転嫁は、企業規模により差があり大企業よ
り中小企業の方が進んでおらず、なかでも非製造業の中小企
業に、この傾向が強いとされている。最低賃金の引き上げが
経済成長へと繋がるためには、企業数と従業員の多くを占め
る中小企業の利益の確保が必須条件となる。
これまでの中小企業の労務費は、コストとして位置付けらえ
いたが、今後は、人材への投資と考える企業だけが成長する
だろうろ、と私は考えている。新たな付加価値を生み出すの
は人間しかいない。付加価値をつけて価格転嫁すればよい、
と頭ではわかるのだが、実際はできないことが多い。
旧態依然のやり方から抜け出すには、多くの困難と苦痛が待
ち受けているからだ。中小企業の経営者は、社員を使い倒し
していない。厳密に言えば社員の頭をだが。
経営者一人で考えていたところでなにかできるわけではない。
できる経営者もいたが、それでも社員にも考えることを求め
ていた。付加価値競争は、考えることの競争だ。AIではでき
ない。できても同じようなものになる。
大幅な供給超過であった需給ギャップは足元では改善してお
り、また各種の政策の後押しもあって中小企業が価格転嫁を
行い易い環境となっている、と言われているが、結論から言
えば、中小企業ほどニッチなところで付加価値をつける以外
に成長することはできない。ニュースばかりにみている暇が
あれば、社員と新たな価値を創造することだ。
どんなに時代が変わろうとも、原理原則は同じだ。どうして
中小企業が大企業になれたのだろうか。そこに人間の原理が
あるようだ。AIなどに振り回されるな。人間だ。