ドイツやフランスでは、労働者の権利を重視する社会民主主
義的な傾向が強いことで、生産性が改善すると、それが実質
賃金にも明確に反映されているらしい。企業が新たに付加価
値を生みだせば、株主の取り分は、資本収益率と同等となり、
それを上回る利益については、労働者にも分配しているよう
だ。
このような発想は、中小企業経営では大切だ。人間は、本質
的に数字が好きだと思う。とくに自分の給与などには関心が
高い。中小企業では、数値を駆使した全員経営をおこなって
いるところはまれだ。経営とは、毎日が数字との格闘だ。
従業員の取り分が、どのような仕組みでできあがっているか
を共有することだ。付加価値を上げていく以外に賃金が上が
ることはない。全員で戦うとはそういうことだ。
創業間もないうちから数字になれることだ。もっとも、数字
だけみれば悲観して退職する人間もでるだろう。そこは、経
営者の未来をみる目が必要だ。
だが、明確な指標をもっていることで人は現状を知り、努力
することを覚える。経営とは、創業期ほど気長でなければな
らない。社員が退職しようとも、数値を社員と共有すること
で事業を成長させていくことができる。
給与の源泉を知り、どこで付加価値を上げていくかを考える
のは経営者だけではない。
中小企業ほど社員を使い倒していない。社員を使い倒す工夫
をすることだ。現在、わが国の大手企業では、資本の取り分
が大きく増えているのだろう。わが国の消費がよくならない
理由のひとつだ。中小企業は大手企業と違いオーナー経営者
の意思で明確な指標化は可能だ。
社員へ付加価値の意味を教えていくことは、中小企業経営の
第一歩だ。増えた付加価値の一部は、従業員の貢献分として
賃金に反映させることが大切だ。