未来に向かう仕事は、不確実なことが前提となる。
また、未来を目指す人は不安に襲われながらも突き進む、そ
れはまるで暗い夜道を走り続けるようなものだろう。
定型的な仕事が確立していれば別だが、私が経験したソニー
子会社のように創業期であれば、定型業務の確立とともに、
未来を目指す仕事をおこなう必要がある。
未来の仕事とは、新たな事業を検討したり、今やっている業
務を改めて見直して次のステージを目指すことだ。
私たち人間は、生理学的な生存を前提にしたつくりになって
いるらしい。
ある記事で読んだ。
未来が見えない世界は、人間がもっている漠然とした概念を
実現していく作業だ。
進む足取りは、どうしても慎重になる。
実のところ、未来を目指している人間は、自分が何を知らな
いか、あるいは自分の知っていることはほんの一部にすぎな
いとの認識を持っているものだ。
他方、不確実であるという未来を目指して歩いているのだが、
自分がとる行動は正しいと確信することで前へ進むことを可
能としている。
失敗も覚悟しているということだ。
また、未来は誰にもわからない。
この点で白黒つけることができない。
蓋然性のなかで戦っている。
蓋然性も人間がもつ能力のひとつだろう。
挑戦する人間は、蓋然性のなかで生きることができる。
別な意味では、未来がおぼろげながらみえているということ
だろうか。
ソニー子会社時代の私の上司や先輩は、未来を語っていた。
私には、見えていない世界だった。
しかし、話をしているうちに自分でも蓋然性のなかで仕事を
してきた。
実際、そのとき話をしていたことが現実になった。
蓋然性の世界では、白黒をつけることができない。
どうなるかわからない世界で行動していくからだ。
また、蓋然性の世界は、すべてを知っているわけではないと
いう現実があるのだが、確信が持てるまで実行しないよりも、
確信の度合いは様々でも実行してみることで、成功の確率を
高くしていくように思えた。
ビジネスの挑戦とは、どんなに調査をして根拠を手に入れた
ところで絶対的な確証を得られるものではない。
刻々と状況は変化しているからだ。
常に、どこかで人間が決断して実行していくのがビジネスだ。
完璧なテキスト的答えを求めるより、八割の確証があれば、
人間がもつ概念によって実行することが重要だ。
実行する以外に、答えはでないからだ。
私は、中学時代にアイスホッケーをやっていた。
スケート靴にかける体重を絶えず左右に移動させながら姿勢
の安定を保っている。このような安定の保ち方を「動的安定
性」と呼ぶらしい。
未来の事業を創造することは、現実にわかっていることで決
断をくだす場合でも、スケート同じで動的安定性が必要にな
る。現実にわかっていることだけに固執すのではなく、常に
多少の疑いをもって、新たな事実が判明すれば、決断のバラ
ンスを変えていくことが求められる。
要は、必要に応じて決断の内容をアップデート更新していけ
ばよいだけだ。
未来を目指す姿勢には、二項対立は似合わない。
白黒がない世界だ。
ビジネスでは、毎回正しいことを言うのが、当然だと思って
いけない。
むしろ間違うことがあってもよい。
新たな事実がわかったり、間違いが判明すれば、修正してい
けばよいだけだ。上司や先輩と話した内容は、私が退職して
から約20年後に実現された。
私は、その一部を担っただけだ。
気が遠くなる話しだ。
そして多くの人間がたちによって目指していた未来が実現し
た、と想像している。
未来を目指す仕事は、誰かが成功者として賞賛されるような
ものではない。
新たなことに挑戦する人間には、白黒をつけられない世界を
大切にする姿勢が求めらる。
白黒がない世界は、多くの人たちを巻き込んで自由な議論が
できる。創業とはそのはじまりであり、すべての社員が行動
者でなければならない。
現実は行動することで変えていくものだ。
まさに動的安定性のうえで行動することになる。
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