私のように大学へ入っても勉強などせず、一人の生活を楽し
んだだけの者は、大学をでてもたいしたことはできなかった。
成績が悪かった私は学校推薦をもらうことはできなかった。
入社試験からスタートは違っていた。
もっとも、このことが人生をおもしろくしてくれたことは間
違いない。
経済環境もよかった。
経済がどんどん成長していった時代だ。
多くはないが給与も上がっていった。
大学をでたことよりも、より効果があったことは管理部門の
仕事において専門性を身に着けたことだろう。
ソニー子会社において徹底的に鍛えられたからだ。
総務、人事、そして経理まで学ばせてもらった。
この点が中小企業への転職でも活きてきた。
専門性は仕事の核になった。
中小企業でも経理の仕事はそれなりの知識と実務能力を獲得
できるだろう。
経理の仕事くらい役に立つものはない。
中小企業では、経理部門が総務や人事の仕事をやっているこ
とも多い。大学出ただけで生きていくことは、とくに管理部
門における事務職の仕事でいえば、むずかしくなっていくだ
ろうと予想される。
大学卒の新卒採用は、昭和の時代には影響力があったようだ
が、それでも会社へ入社してしまえば仕事における成果しか
ない。まわりに大卒が多いだけであり、大学そのもの力での
していけるほど会社の仕事は甘くない。
ソニー子会社では、高卒で出世する人ばかりだった。
ソニー本体のように大卒が支えている会社ではなかった。
みな技術職だ。
管理職も技能をもつ人たちだった。
有名大学を出ても成果が出せない人間は弾き飛ばされる。
会社とは、そもそもそのような存在だ。
かつては、大卒は一部の人間だけが得られる希少な資格だっ
たのだろうが、今やその価値は暴落しているようだ。
むしろ大卒になってしまったことで不要なプライドをもち、
人生の足を引っ張ることもある。
OECDの統計では、日本の25〜34歳における大卒率は約66%
になっている。今や大卒は普通の時代になった。
世界のなかでも、日本は大卒率が高い国のひとつのようだ。
今では虚偽でなくとも誰でも持っている資格なのだ。
中退でも問題はないだろう。
入試に合格していれば、私のように勉強していない卒業者と
中退者の差はほとんどない。
人間としては、ウソをつくことがよくない。
私は、見事にモラトリアム期間として消費してしまった。
これからの人口減少社会をみていけば、18歳人口は急速に減
少しており、2040年には約80万人規模になると予測されて
いる。人口減と大学の供給過剰のミスマッチによって、これ
から大学の淘汰がおこなわれていくだろう。
実際、一部の大学などでは閉鎖が進んでいる。
大卒という資格そのもが、環境の変化、たとえばAIの台頭に
よって事務職の雇用に影響がでてくると予想されている。
OECDなどの報告によれば、AIの影響を強く受ける職種は事
務・秘書・会計などのホワイトカラー職であると言われてい
る。この分野は、従来、大卒者が占めてきた職種だ。
現状でも事務系の仕事はシステムの導入によって、すでに事
務職の人余りは深刻であり、今後益々人員が削減されていく
だろう。大卒のホワイトカラーを目指しても、一般的な事務
系の職であれば、ありつけないことになるだろう。
現在の社会では、現場仕事をホワイトカラーよりも低くくみ
ている傾向があるが、この点で雇用のミスマッチが大きくな
ってきているのだろう、と想像される。
人手不足は、専門性のない事務職は過剰になっており、電気
工事士や物流などは人手不足が深刻だが、事務職の人材がそ
こへ行くことを望んでいないようだ。
雇用の現状は、そう簡単に変わらないが、いずれ賃金によっ
てこの事実を知ることになるだろう。
実際、私が仕事をもらっている方は、電気工事士1級の資格
をもって会社経営をされている。
報酬は、おどろく額だ。
勿論、大卒ではない。
大卒の肩書きの有効性は、いわばマーケットが決めることだ。
むかしは大学にいけなかった人の仕事と言われていた現場仕
事が大卒者の給与を確実に追い抜いていくだろう。
本来、時代には流れがある。
人間にとっては、その流れを見極めることは容易くないのだ
が、そのなかで変化を柔軟に把握して、社会が必要としてい
る仕事へ転換することが生きていくうえで必要となるだろう。
時代は変わった、という感覚をはやくもった人間ほど、むだ
なコストを払うことなく仕事につけることになる。
時代の転換期は、変化の事実を受け入れことができる柔軟な
人間ほど生き抜いていく力を得ることになるだろう。
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