大手企業の勤務では、その多くで転勤がある。東京商工リサ
ーチが8月28日に発表した調査内容では、直近3年間で、
転勤や配置転換などを理由に従業員が退職した経験を持つ企
業は全体の30.1%に達し、大企業に限ると38.0%に
上ることが明らかになっており、従業員の退職リスクは企業
の事業展開の足かせとなりかねず、柔軟な転勤制度の導入が
急務だが、実際にこうした制度を導入している企業は全体の
約1割にとどまるなど、対策はまだ道半ばであることが浮き
彫りとなった、と報じられていた。
私が知る従業員50名以下の小企業では支店がなく、転勤は皆
無だった。社員は、会社の近くに住んでおり、通勤時間は少
なく、子育てなどでも柔軟な対応ができていた。中小企業の
よいところだ。中小企業の経営は、少々ルーズなくらいでち
ょうどよい。優秀な人間には、ルーズなものが結構いる。め
くじら立てないことだ。
創業経営者も鷹揚だった。社員を人として大切にしていた。
こんな創業経営者は、実は多い。それだけ属人的だが、社員
が仕事をする環境としては悪くない。中小企業は課題も多い
のだが、ある程度の規模まで転勤とかを考える必要がない。
本来、転勤がない生活が一番なのだが、大手企業ではそうも
いっておれない。大きな会社になるとは、そういことだ。中
小企業の創業期をうまく生き残るための要素がここにある。
大手企業の優秀な人間を雇用することだ。しかも、雇用した
らじっとながめていることだ。その人間の人となりをみろ、
だ。めくじらを立てるのは、それからでよい。どんな人間が、
どのような貢献をしてくれるかなど簡単にはわからない。
転勤がない(少ない)ことは、中小企業にチャンスが生まれ
る。中小企業が採用してはいけないのは、優秀で真面目な人
間だ。社内にこのような人間を雇用できる環境はない。
中小企業では、不真面目でルーズ、そして優秀な人間がよい。
このような人間が少なくなってきたのだろうが、創業者に忖
度もしない。社会に余裕がなくなってきたが、しかし、中小
企業は、そんな時代にこそチャンスが生まれる。