私は、そもそも冷めた人間だ。情熱などない。おもしさを探
求するほうだろう。仕事も遊びと同じだった。飽きたらやめ
ると、答えは簡単だ。中小企業だけではないのだが、やたら
情熱を言う経営者もいるようだ。仕事に情熱などもてるのか、
というのが私の疑問だった。情熱とは、燃えあがるような激
しい感情だと、辞書に書いてあった。
私は、仕事にはまっていたが、それは情熱ではない。遊びの
延長だ。好奇心の塊だ。とにかく仕事でもおもしろくしてい
けた。おもしろくさせない原因は、学校と同じで画一的なこ
としか求めない企業にあった。
その点、ソニー子会社時代は、創業期だったから学びの宝庫
だった。遊び場と同じだ。あらゆることが好奇心の対象だっ
た。ただただおもしろい。いろいろなことを自由にやらせる。
情熱で仕事をしてきたわけではない。勉強も仕事と同じだ。
ただおもしろかったから受験勉強にはまっただけだ。情熱と
は無関係だ。
中小企業は、そもそも好奇心の対象になるようなものが多い。
とくに大手企業で働いたものであれば、不思議な世界にみえ
るだろう。創業経営者が黙っていてくれれば、改善すること
が山積みだ。いわば宝の山なのだ。私は、すぐにはまってし
まったが、経営者は、それが気に喰わない。勝手に会社のな
かをいじるな、と罵声を浴びせられた。
これが私がみた中小企業の実態だった。残念だが、中小企業
は、いつまでたっても中小企業のままだ。会社をよくしてい
こうと考える人間が働く動機は、好奇心だ。情熱でもなけれ
ば、強い意思でもない。従業員と経営者では、この点は大き
な違いがある。これを間違う経営者は多い。従業員には好奇
心ある人間を採用することだ。黙っていても会社は変わる。
中小企業には、ソニーのように黙っておれる経営者が少ない。