中小企業で注意が必要な点は、格差社会が固定化してくると、
社会のなかで階層を上方に移動する手立てが少なくなること
だ。大企業の下請けに身を任せていると、下流の事業に落ち
ていくだろう。仮に下請けをしていなくとも、他社と同じこ
とをしていれば下流に固定されやすい。
仏教では六道という言葉がある。漫然と事業をしていれば喜
びが多く、苦しみや迷いの少ない天道に上ることを諦めてく
るようになる。その結果、欲望と怒りに身を任せ、争いが絶
えない修羅となり、食うことばかりに執心し、食われる不安
におびえるような生き方になる。
中小企業の経営は修羅場の連続だった。経営者をみていると
まさに六道の苦しみだろう。そのようにならないために、社
員とともに工夫をする日々が必要だ。一人でもがいている経
営が多かった。弱さをみせたくないのだろう。所詮、人の強
さなどたかが知れている。解脱できている経営者ほど社員を
信頼していた。