中小企業の採用ほどむずかしいものはない。すべて経験者採
用だからだ。いわばジョブ型雇用だ。採用試験も面接が中心
となるため仕事の能力は、入社後、仕事をしてもらうことで
はじめてわかる。うちで欲しい能力ではない、と後日わかる。
辞めてもらう。この繰り返しが、私が知る中小企業には多か
った。
うまくはまれば仕事を続けてもらう。もっとも、社員のほう
から、企業に見切りをつけられて辞めていくことも多い。お
互いさまだ。こんな状況だから持続的な経営ができない。
やはりお互いの齟齬をなるべく少なくするための努力が必要
だが、そんな悠長なことはしておれない、という経営者が多
い。
自転車操業になるわけだ。採用と同時に自社を客観的にみる
習慣が必要だ。ここにも学習がいる。その点でも大手企業の
人材を捕まえておくことだ。仕事をやってもらいながら学ぶ
ことができる。優秀であれば、参謀をさせる。もっとも、そ
の際、人間性が一番大切だ。間違っても私のような横柄な人
間を参謀にしてはいけない。
採用者にもワークサンプルの機会を与える。自社の仕事に適
応できるかどうかを知ってもらう。企業側もその人間が必要
スキルをもっているかどうかを確認する。そのような期間を
設けて双方が納得した条件付き雇用契約をしておく。辞めて
もらう場合、労働基準法通りの対応をとるなど、合意解約が
できる前提をつくっておくことだ。
人間として当たり前の行動をすればよいだけだ。チャンスを
与え、お互いが納得して仕事をしてもらう。中小企業だから
できる採用方法だ。野球やサッカーなどでも入団テストがあ
る。企業の場合、その期間が少し長く必要になるだけだ。
工夫すれば、いろいろなことができる。中小企業ほど、やり
方はたくさんある。