システム化やAI化は、既存の仕組みを抜本的に変えるから意味
がある。
抜本的とは、独自性ということではない。
組織というところは、人がつくっているものだ。
企業には、その分その企業のなかの人間がつくってきた仕事の
やり方が多くある。システム導入で仕組みを抜本的に変えると
は、企業内の仕事のやり方を標準化していくということだ。
ところが日本企業や日本社会は、物事を抜本的に変えること、
いわゆる標準化に抵抗する。出来上がったシステムの多くは中
途半端なのものになりやすい。
欧米におけるシステム化は、標準化を進めていくことであり、
社会全体の無駄取りをしているようなものだ。
既存のシステムを廃棄し、新たなシステムを導入することは、
企業活動における標準的な運用が前提となっている。共通化や
無駄な作業の削減が前提であり、できないことはないが、個別
企業の最適化や付加価値化を目指すには相応な投資額になるだ
ろう。
トヨタのカンバン方式は、トヨタと取引企業間における部品な
どの受発注業務を連携するためのプログラム化をトヨタ主導で
おこなっているのだろう。
トヨタは購買力があり、生産活動全体を統制できる力があるか
らだ。ところが一般的な企業では、そもそも取引額がそれほど
大きくなく、自社独自の購買管理システムを稼働するにも購買
力がないことがほとんどだ。
仮にシステムを連携できたとしても、部品などの欠品や配送途
中のトラブルがあれば、生産活動に大きな影響を及ぼす。適正
な在庫管理をするためには、膨大な過去データが必要になる。
しかも生産に必要な部品数だけでなく、欠品情報とその内容、
相手先のトラブルなのか、社会インフラのトラブル(交通事故
)なのか、といった情報までもが必要になる。
在庫管理は、いうほど簡単ではない。
そもそも、そのようなデータをとっている企業は少ない。
わが国の企業では、現場の独自性が幅を利かせる。
独自性といっても企業独自の仕事のやり方という程度だ。
その程度の独自性で付加価値をつけれるわけはないないのだが、
現場は従来からある仕組みに固執する。
おらが仕事のやり方だ、と。
それで付加価値が出せるわけではない。
あるいは今の時代では現場を知らない人間が理想を掲げてシス
テム導入に邁進する傾向もあるようだ。
いずれにしてもシステム導入前に、システムの概念を学ぶこと
が必要だ。システムの概念を学ぶとは、システムの限界を知る
ことだ。
なぜ、システムを入れ替えるのか。
理由は、会社のなかにある無駄取りだ。
システムの導入が付加価値を生むのではない。
システム化によって余った時間をつかい人間が付加価値を生み
出す。システムやAIの導入とは、その程度だ。
中小企業がシステム化すれば、かえって労働時間が長くなると
いった笑えない話がある。システム導入は、うまくやれば各企
業の事務コストや生産コストを下げてくれるだろうが、それで
付加価値を生むわけではない。
多くの企業では、システム導入で人員削減をおこなうことなど
もない。事業が成長していく前提で新たなシステムの導入を目
指すからだ。その成長を支えてくれる一部がシステムであり、
誰でも容易に使えて、社員が増えても手間がかからないといっ
た間接コストの削減や生産ラインの省人化、あるいは省エネ化
が前提となる。
生産部門では、システム導入の設計図がしっかりとできあがっ
ていれば、生産ラインにおける優位性を保てることはあるが、
なにぶん製品サイクルは短く、生産ラインには柔軟性が求めれ
ている。いわゆる少量多品種生産だ。
このような柔軟な生産ラインを稼働できるようなシステム化が
できれば、他社を凌駕できるチャンスが生まれるように思える
が、このような独自システムを独占するには、自社開発しかな
く、成功させるには相応な投資額になるだろう。
システム化やAI化で競争力がつくということは少ない。
大手企業ほど、どこも同じことを考えて実行するからだ。
中小企業では、大手企業のような生産ラインをもつほど受注は
ない。むしろ製品に特長をもたせることが重要だ。
ここでも労働集約型の仕組みが活かされる。
人はマルチタスクができるからだ。
中小企業では、システム化は必要最低限にしておき、あとは、
社員による製品やサービスの付加価値化を目指すべきだ。
中小企業では、人とシステムのかかわり方がよくみえる。
この点を理解しながら事業を成長させていく企業だけが発展し
ている。
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