企業の情報をありのまま求職者に話ておくことは重要だ。結論
から言えば、人間は想像していた内容と違えば違うほど退職す
る動機が増える。リアリティショックだ。求職者が期待する期
待値と入社後に顕在化する現実とのずれだ。
リアリティショックとは、人が新しい社会、新しい組織、新し
い状況に直面したとき、人が事前に抱いていた期待と実際に直
面にした現実とのズレによって起こる衝撃( ショツク )を指
している。大学を卒業して初めて正社員として働くことになつ
たとき、自分で情報を集め、会社の文化や働き方、あるいは他
の社員たちの考え方などについて、自分なりの理解をしていき
ながら、期待が作られていく。もっとも、現実は期待どおりに
はならないものだ。
私は可能な限り社内情報を正直に、むしろ入社後不安を覚える
だろうと思われる情報も出すようにしていた。できるかぎりリ
アリティショックを和らげることで、入社後、求職者のショッ
クを少なくするためだ。さらに、環境になじめない人間を採用
しても、多くはすぐに退職するからだ。
中小企業は、この点でも改善すべきことが多くあった。そもそ
も大手企業とは社内環境が違う。ないものずくしだ。それでも
自社が目指すものがあれば、堂々と話せばよい。ところが、多
くの中小企業では経営者が時間がもてない、あるいは採用を担
当している人たち(多くは兼務なのだが)が、数合わせの採用
をしていることが多かった。
これではいくら人を採用しても補充採用の繰り返しになってし
まう。中小企業ほど、ありのままの姿を話さなければならない。
もっとも、その前に目指すものがなければ話にならない。その
うえで採用活動なのだ。経営というものは、バランスが必要だ。
中小企業ほど経営のバランスが悪い。だが、バランスがとれた
経営をしていかなければ明日はなかった。経営のバランスがと
れている企業だけが成長していった。
なにでバランスをとるのか考える必要がある。