採用目的の第一は、将来不足するだろうと思われる人材を獲得
するというものだ。経験者採用と新卒採用、中途採用、あるい
は出戻り採用などの違いはあるが、採用の目的は、経営目標や
戦略の実現に必要な人材を確保することだ。それが採用活動の
当たり前の姿であり目的だ。
第二は、職場や組織の活性化だ。組織や集団というところは、
時間とともに劣化していくものだ。組織内が同じメンバーだけ
になり、長期間同じような状態が続くと、活発なディスカッシ
ョンや情報交換の頻度が下がり、閉塞的になり、社員同士に慣
れが生じたりする。あるいは同調圧力によってコミュニケーシ
ョンがおろそかになったりしていく。終身雇用制度の負の面で
もある。
慣れや同調圧力によって均質化した集団というものは、社員に
は居心地の良さと安心感をもたらすが、その反面、このような
状況が続くことで社内には、活発な意見交換やディスカッショ
ンがおこなわることが少なくなり、組織活動は停滞するように
なると言われている。採用によって新しいメンバーが加わるこ
とは、組織内に外部者の視点が取り込まれ、組織に緊張感をも
たらすことで、同質的な組織がもっている閉塞感と硬直した社
員間の関係を壊すことが可能となる。このことは、採用の第二
の目的でもある。
採用とは、そもそも企業の目標と戦略の実現のため、さらに組
織を活性化するためにおこなうものだ。
中小企業の場合、この点が根本的に違う。採用の多くは、人材
の補充という点でおこなうことが多いからだ。このような採用
も採用目的のひとつだが、組織目標がない、あるいは見えない
採用は、採用された人間にとっては不安ばかりが増す。大手企
業でも採用当初は組織に対して不安をもつものだが、大手企業
と違い中小企業の場合、組織はさらに混沌としていることが多
かった。
経営者は、会社の未来を語らなければならい理由がここにある。
多くの人間は混沌とした状態が苦手だ。今は雑然した組織であ
っても、いずれ整然としていく努力が必要になる。多くの中小
企業にはこの点が欠けていた。また、整然がよいことばかりで
はないのだが、ひとまず組織内に整然とした機能が求められる。
そのために大手企業出身者を活用する。これでも完全ではない。
中小企業のなかでも成長を続ける企業では、常に人材の確保と
入れ替えが求められる。理由は、組織もステージごとに成長が
求められ、高い要求レベルの人間が必要になるからだ。中小企
業の成長は、この連続作業が続く。経営者に覚悟が求められる
場面だ。