私のような凡庸な人間は、採用時における筆記試験など普通
の成績だ。むしろ、ソニー子会社時代に自分で試験結果をみ
て明らかになったのは、普通以下だったということだ。我な
がら試験結果にあきれていた。
人材の能力とは、結論から言えば、採用活動時に見出された
能力や特性(筆記試験など)と採用後に自分の自助努力によ
って成長できる部分、それから採用後に行われる教育や育成
が合わさったものだ。
当然だが、組織の社員として採用されなかった人たちについ
ては、本人の自己啓発と組織の教育の結果として起こりうる
だろうという成長について把握することはできない。
採用活動とは、人材がもつ基本的な能力、いわば能力の初期
値 にて判断するだけになる。採用後の能力開発は、自己啓発
や企業が有する人材マネジメン卜が担っている。さらに創業
時代からの社風があるだろう。たとえば人に任せるとか、組
織に自由さがあるとか、その企業がもっている独自の組織運
営によって人間の能力は開発される、と確信した。
人材がいないのではない。人間が自分で能力を磨いていける
ような環境が、とくに中小企業には少ない。創業経営者は、
稼ぐことに血眼になっており、お足元にいる人材の能力が開
発されることなどないだろうといった態度だった。このよう
な経営では、企業に未来はない。自らの足元をみて人間がも
つ能力を信じている経営者だけが事業を成長させていった。
事業を成長させる経営者は、当たり前のことを知り、実行で
きる。だが、このような経営者は極めて少ない。