わが国における心理学は、世界的傾向とは異なり、産業や組織
にかかわる心理学の専門分野としてほとんど関心が持たれてい
ないという特殊な発展を遂げているとされている。大学設置の
独自性から心理学部が少なく、国立大学では学科規模の心理学
教育で満足してきており、心理学教育が企業に広く提供されて
こなかったため、産業や組織における活用ができていないとこ
ろが特徴となっているようだ。
この国における企業内の問題は、このような点からもでてきて
いるように思える。人間のスキルや能力ばかりが注視されてき
たわが国の産業は、高度経済成長期に世界を凌駕したが、その
後、みてきた通り大きく衰退してきている。現在では、企業に
おける人間関係の問題は、多くの法律や制度の制定のなかで、
私が生きてきた時代と比べると、より複雑化してきていること
だ。
社員数が多い大手企業ほどこの問題は深刻だ。当然だ。社員数
が多くなればなるほど人間関係は複雑化する。厚生労働省の調
査からもその実態がわかる。
この問題は、これからも増えることはあっても少なくなること
はないだろう。中小企業における社員のマネジメントにも工夫
が必要なのだが、社員数が少ないことは有利な点ばかりか、大
手企業からの転職者を受け入れる際の利点となる。中小企業の
経営者は、このような現状を理解しながら、人間が活動するう
えで、自社にどのような特徴がある組織をつくっていくかが問
われる。人間心理を学ぶことは、中小企業ほど有利になる。