人間には、すべての人がそうであるわけではないのだが、物事
を探索しながらなにか自分が求める結果が得られると、それが
報酬(お金でない)に変わる人たちがいる。私もそのタイプな
のだが、お金は二の次だ。むしろ、私自身が探索や調査したこ
とで経営改革プランを起こし、企業として成果が出せればよい。
私自身の賃金と結びつかなくとも、私には、それが報酬と感じ
ていた。
もちろん、それで賃金が上がればなおよい。そんな企業は、中
小企業に少ない。だが、探査や調査をすることが好きな人間に
は最高の環境なのが中小企業だ。人間は、探索した結果、成果
が得られたりすれば、そのことによって探索や調査という行動
が強化される性質がありそうだ。
精神分析でも、自分の置かれた環境を自分なりに支配したいと
いう本能があり、自我の発達との関連で想定されてきた、と言
われている。企業などの環境を支配するという行動は、自分自
身のアイデンティティの確立に結びついていたように思えた。
もちろん、経営職に就くような人たちは、このような意識が強
烈にあるのだろう、と推測される。
私が中小企業の経営者にアドバイスするのは、このようなタイ
プの人間ではない。お金や権力、あるいは地位を目指すタイプ
でない。お金以外の報酬系をもっている人間をいかに探せるか
だ。お金で勝負しても、所詮大手企業に勝てるわけがない。人
間にはいろいろなタイプがいるということを知ることだ。
創業経営者に必要なことは、人間を知る努力をすることだ。お
金で能力を買うことは誰にでもできる。また、会社が大きくな
り賃金水準があがれば、あらゆるタイプの人間を採用できる。
中小企業のよいところは、本当の人間を知れることだ。