企業のなかにおける組織を考えるとき、そのなかで働く人間関
係は重要だ。理由は、会社の組織というところは社会であり、
人間の心理的な要因に強く影響されている。とくに中小企業で
は、仲間の決めた事や慣習などが仕事に大きく影響していた。
このような決め事や慣習などが、企業の成長に良い影響を与え
てくれているものであればよいのだが、中小企業の場合、その
なかでリーダーとして指導的な立場をもつ人間が会社へ良い影
響を与えていることは少なかった。
このようなことになる原因は、その人がもっている社会空間の
狭さからくるように思えた。具体的に言えば、中小企業のなか
でしか仕事をしたことがなく、社会的な視野が狭いことに原因
があった。このことは私が経験したいくつかの中小企業でみる
ことができた。
当然だが、私のような人間が中小企業へ入ってくると、元々在
籍していた人間は警戒感をもつことになる。これまでの慣習な
どを破壊されると思っているようだった。中小企業が成長しな
い要因のひとつにこのような人間の存在がある。
中小企業ほどインフォーマルな集団の強い影響力を受けている
ことも多く、経営者といえども、このような人間からある程度
の影響を受けていた。
中小企業を発展させていくためには、中小企業のなかに社会的
な広がり必要であり、幅広い社会的な視野をもつ人間が存在す
ることでしか組織は拡大していかない。経営者でも頭では理解
できているのだが、人の入れ替えを大胆に実行できる人が少な
かった。人間の心理は、組織のなかで働く人々の集団や人間関
係のなかに埋没していくことが多かったように思えた。
この点を理解して人間の活用ができる経営者だけが、中小企業
から大企業へ転換させていった。
人間を大胆に入れ替えることには勇気がいる。創業経営者は、
常に自らも視野を広げていく努力をすると同時に、広い視野と
経験をもつ人間を採用し、中小企業の組織のなかに社会的な広
がりをつくってくれる人間を活用するという未完の課題の連続
に挑戦していかなければならない。