人間にとって情報は権力を支えるコアな要素だったが、現代社
会は、あらゆる情報がいきわたる解放系の社会だ。このような
社会は人間関係を希薄化させていく。誰でもたくさんの情報に
触れることができるからだ。企業の運営は、まる裸にされてい
る。そんな社会で旧態以前のマネジメントおこなっていれば、
企業はひとたまりもないだろう。簡単に壊れる。
しかも経営環境は、人口減少をはじめとして厳しくなるばかり
だ。成長できる企業には、適切な人間関係が必要だが、昭和の
時代のような飲み会や慰安旅行などで人間関係を築くことはむ
ずかしい。そもそも昭和の時代でさへ、私はそのような人間関
係を避けてきたほうだ。
もっとも、自分が尊敬できる人だけは、相手が嫌がるほど密な
人間関係を築いていた。仕事に必要な実践的な内容を、いろい
ろと学べたからだ。尊敬できるから素直に学べた。私が人から
学ぶには尊敬という座標が必要だった。
どんなによいと思われたソニー子会社でも尊敬できる人は、三
人だった。営業時代は一人の先輩だけだった。それほど少ない。
会社生活における人間関係とは、そもそもそのようなものだろ
う。むしろ、多くの社員たちと仕事を通してコミュニケーショ
ンすることが前提なのだが、その前提は、普通の生活の延長だ
った。仕事をするための必要最低限の会話ができることだった
が、これができな社会が訪れているようだ。
中小企業で働いていた状況を思い出す。人間関係は希薄化され
、仕事における会話までむずかしかった。今の時代、言葉を発
することがリスクを伴う時代だ。管理職などの経営のコアにい
る人間ほど言葉を発することを警戒しているだろう。そんな会
社の人間系のマネジメントが希薄化されていくのは当然だ。社
員は、そんな環境を敏感に感じ取る。大きな企業ほど、マネジ
メントがむずかしい社会が生まれている。
小さな企業が有利になっていく点は、仕事がみえるからだ。し
かも会話が簡単にできる。経営者と社員の齟齬が少ない。仕事
をするということが体でわかる。農業なども、同じようによい。
体で仕事を体得できるからだ。仕事に会話ばかりの環境は必要
はなく、仕事をしている自分を実感できることが大事だ。
中小企業ほどチャンスがあるが、実態は、中小企業ほど、閉じ
た組織になっていることが多かった。中小企業ほど、むしろ解
放系の組織が必要になる。解放系の小さな組織ほど今の時代に
あっている。さらに少人数の中小企業は、そのような組織を作
りやすい。経営者の姿勢ひとつで変われるからだ。
中小企業が発展するチャンスが目の前にきている。