私は、中小企業を中心にかなりの数の会社をみてきたが、成長
する企業の経営はシンプルだと思った。むずかしい理屈はいら
ない。現場で働いている従業員と取引先の従業員たちがいっし
ょになってワイガヤをやりながら、よい仕事をする努力を続け
、元気に働いているかどうかだった。
中小企業や大手企業の枠はあまり関係ない。現場に足を運んで
みてきた事実だ。だが、このような会社は少ない。経営には鉄
則があるようだ。私は別だが、よい業績を継続的にだしていけ
る企業には、社員がやっている仕事に誇りをもち、自らが所属
する職場に愛着をもつ人々が多くいた。
社員が生き生きと楽しそうに力を合わせて働いている現場は、
本当に高い業績を上げていた。反対に、同じ企業であっても部
署によっては、社員が全然楽しそうではなく、どこか暗い雰囲
気が漂っている現場は、業績がよくなかった。明白だった。
企業にも大きな差があったが、よい企業のなかにも、部門ごと
に差があるものだ。
経営とは、この差を小さくしていく努力をしていくだけだ。よ
い企業ほど、この努力を真面目にやっていた。やはり人に行き
着いてしまう。人材の配置転換の基本は、社員が生き生きと働
ける職場を作れるかどうかだ。その点、管理職のマネジメント
能力が問われていた。この点をいかにはやく把握して現場の体
制を構築できるかが経営者に問われる。
多かれすくなかれ、組織には属人的要素があるが、それを排し
て現場の社員が働きやすくすることが経営者に求められる。
誰しも人事権を行使することは嫌なものだが、多くの情報をベ
ースにやるべきときには毅然と人事権を行使できる経営者がい
た企業は着実に事業が成長していった。
ワンマン経営者は、案外、現場の社員が働きやすくするための
人事権の行使ができなかった。属人性が長く残ることになる。
この結果は、言うに及ばずだ。