私が知る中小企業の特徴は、社員を数字のように簡単に扱うこ
とが特徴でした。解雇など、わけなくおこなっていました。社
長の一言でした。このような会社の雰囲気が良いわけがありま
せん。社員は日常的に疑心暗鬼になっています。
今、大手企業でも社員を数字のように扱う企業が増えてきたよ
うに思えます。株主中心主義の弊害の部分でしょうか。私には、
事業を成長拡大できない経営者が多くなった、と感じています。
本来であれば、事業構造を変えていかなくてはならい時代に、
過去30年もの間、事業構造を変えることもできずコストカット
ばかりをおこなう経営者が増えました。付加価値がある製品開
発はできておらず、やたら株主のほうを向いた経営に主眼がお
かれてきた、と考えられます。
もっとも、需要が激減すれば雇用を減らし、需要が戻ったら雇
用を増やすのは理論上は正しいのかもわかりません。そこには、
従業員を数字としてみた概念があり、付加価値を生む、さらに
生活者としての人間が欠落しているように思えてなりません。
組織は、人間が集まることで成り立っています。人間が高度な
技術を習得するためには長い時間がかかり、その技術を次の世
代に引き継ぐためには、組織のなかに良好な人間関係というイ
ンフラが必須です。
ところが、株主を重視した経営の本場、米国では、数字を足し
たり引いたりするような感覚で、人間を扱うことが多いのでは
ないでしょうか。米国産業の衰退には、このような背景がある
と、私はみています。
日本は米国ほど強烈ではありませんが、今では、中高年層の社
員を対象にした早期退職をおこなうことで、米国と同様な対応
をとろうとしているように思えてなりません。
日本の中小企業ではありませんが、人間という生命体が運営す
る組織が成長できない理由のなかには、大手企業では、過度な
株主中心主義があり、中小企業には、極端なオーナー主義があ
る、と私は考えてきました。
付加価値を生み出す経営者は、大手企業でも、中小企業でも、
社員(人間)を成長の原動力にしていました。
甘えの長期雇用は必要ありませんが、事業を成長拡大させてい
くための結果としての長期雇用は、どのような企業でも必須で
す。