私は、原理原則という言葉が好きだ。理由は、普遍性があると
感じるからだ。会社生活や家庭生活にも原理原則が必要だ、と
考えてきた。会社で仕事をする人たちや家のなかでいっしょに
暮らす人たちとは、相手を尊敬できるという前提がある。
尊敬できない人たちがいた会社を私は辞めた。私には当然の行
動だった。原理原則の中身は、実に簡単なことだ。
嘘をつかないこと、約束を守ること、相手を尊敬できることだ。
いわば時代とその状況に左右されないものだ。
問題は、常に、原理原則に基づいて行動できるかどうかだ。い
かにむずかしいことかは、多くの不祥事をみればわかる。不祥
事は、必ず原理原則を逸脱する。
言葉でいうことは簡単なのだが、原理原則に基づく行動(経営)
することは言うほど簡単ではない。
その努力を日々している企業や家庭だけが困難を乗り越え、成
長していける。会には、監査部門が機能することで原理原則が
守られていた。とくにソニーは、この原理原則の行動によって
経営がなされていた。だから、自由があった。
だが、家庭には監査部門がない。家庭生活は、企業活動のレベ
ルをはるかに超える行動力が求められる。
良き家庭人が、良き経営者になれるのは、原理原則を体現して
いるからだ。私は、失敗したが、これから経営者や管理職を目
指す人たちは原理原則に基づいて挑戦してもらいたい。
経営だけでなく、家庭生活でも、簡単ことほどむずかしいもの
はない。