不動産販売業では、歩合制の給与を採用していることが多いも
のです。歩合制で採用される人たちは、自分の力で一旗揚げる
ことを狙っており、相当尖ったタイプの人間たちでした。
それでも経営者は、優秀な成果を出していく尖った社員の話を
よく聞いていました。
彼らは、市場における問題点や課題を正確に把握していたから
です。経営者は、その話に耳を傾けて、すぐに自社の販売政策
に活かしていました。優秀な経営者ほど、尖った人間を好みま
す。仕事もできるし、市場の状況も的確に把握しているからで
す。
もっとも、このような尖ったタイプの人間は、組織的な行動が
苦手です。事業が拡大し、マネジメントの転換がおこなわれて
いくと、残念ですが、退職して自分で起業していました。
尖った社員でも行動力がある人間は、組織のなかでじっとして
いることはできません。とくに組織的な対応ほど、無駄と考え
ています。これはこれで致し方ないことです。
他方、社内にあって尖ったタイプ人間は、やはり組織が苦手で
すが、不動産業における個人的なタイプとは、また違った尖り
方をしていました。仕事をきちんと進め、組織と必要以上に軋
轢を起こしたりしません。ただ、自分の世界をもっています。
自分の世界をもつことが、社内にある問題や課題を的確に把握
する力になっています。簡単に他の社員や組織の意向に沿うこ
とがありません。
だからこそ、時間は多少かかりますが耳を傾けて、尖った社員
がつかみ取っている問題点や課題を知る努力が必要になります。
サラーリマン根性が染みつくと、社内の本質を知ることよりも、
社内政治に走るものです。尖った社員は、この社内政治をもっ
とも嫌います。
話を聞く側に政治的な意図があれば、不信感しかもたれないで
しょう。反対に、とことん本音で話ができる経営者は、事業に
おける大切な実態を知ることができるようになります。
こうしたことを繰り返しながら、尖った社員から得た情報によ
って新たな施策おこない、指摘された問題点や課題が解決され
てくれば、尖った社員を含めて組織が機能し始め、成果を上げ
てくれるようになります。
同時に、経営者に対しても好感をもつようになり、信頼を寄せ
てくれます。
組織というところは、好き嫌いの感情で動くのではなく、組織
として成果を出すために経営者が先頭に立って対処することで、
よい人間関係が生まれ、職場内のチームワークが醸成されてき
ます。