企業経営の当たり前の原則は、利益 =売上 -経費ですから、
経費をカットすれば短期的に利益が増えることです。ところ
が、強引におこなわれたコストカット経営は、結果として、
品質やサービスの低下によって顧客が減少し、売上が減り、
当然ですが、利益が減少していきます。さらに利益を絞り出
そうとすれば、単純な経費削減策ばかりを乱発し、企業は売
上の減少と利益の減少に見舞われます。そして負のスパイラ
ルへはまっていきます。
とくに失われた30年では、ある人は生産性が上がっている
にもかかわらず、人件費が抑制されてきたことで、企業は内
部留保を増加させている、と述べています。
なにか不自然なことが続いていたのが、これまでの経営だっ
たように思えます。ところが現在のように値上げの時代に入
れば、企業は値上げに積極的ですが、利益>人件費のバラン
スで春闘がおこなわれるため、なかなか実質賃金は増えませ
ん。これがほんとの経営なのでしょうか。
日本社会の特徴ですが、コストカットの横並びと同じで、現
在は、値上げの横並び状態です。
経営者が人件費抑制などで利益を上げてきたとすれば、現場
をないがしろにした利益といわざるを得ません。この国の経
営はいつまでたっても現場をおろそかにしている経営ではな
いでしょうか。
人件費を抑制し、不正は現場に押し付けるなど、経営者のど
こに経営能力があるというのでしょう。
不思議な国です。
経営者報酬だけは上がっているというコスト削減型経営は、
多くの矛盾ばかりが目立ちました。
中小企業の経営者は、コスト削減と投資のバランスをよく
理解していました。
事業を成長させていくのは、投資の実行しかありません。
コスト削減だけで利益がでても、それは一時的なものにす
ぎないのです。
この意味で中小企業ほどチャンスあります。
しかし、下請け企業として大手企業の言いなりでは、新規
投資はむずかしくなります。
中小企業は、大手企業と一線を画したオペレーションがで
きるインフラがそろっています。
下請けをやりながら自社の独自性をもった事業を構築する
ことになります。
あるいは、はじめから大手企業の下請けをやらないビジネ
スを展開することです。
日野自動車は、主にエンジンの認証不正問題の影響で、20
24年度の決算では営業利益は黒字に転換したようですが、
認証不正問題に伴う損失処理により最終的には2177億円の
赤字となっています。まさに現場をおろそかにしてきた経
営です。日野自動車だけではありません。
日本人は、多くの問題をすぐに忘れていきますが、大手企
業が、常に絶対優位ではありません。現代のように混沌と
した経済状況ほど、多くの企業にチャンスが生まれるでし
ょう。まだ、改善する余地があるものは、私がみただけで
もかなりあると思っています。