経理の数字とは、そもそもすべて過去の数字であり、その分析
は過去の経営実績の分析にすぎません。いわば経営数字を分析
するとは、実際は過去を分析しているだけなのです。経理の数
字を意図的に見栄えよくするのは、実態を隠しているだけであ
り、その対応の多くは粉飾によっておこなわれます。
本来、企業経営の前提は、未来を見据えることです。自社の状
況を正しく認識し、将来、このような会社になりたい、という
ビジョンを描くことですが、会計の役割は、そのような未来に
近づくための手立てを着実に講じているかどうかを確認するた
めの手段でしかありません。
なかでも経営指標は、ビジョンや手法が正しいかどうかを確認
するためのツールにすぎません。経営指標が改善していれば、
会社が正しい方向に向かっていると判断できます。反対に、悪
化していれば、適宜、適切に軌道修正することが求められます。
要は、企業の実態を客観的に判断し、問題があれば迅速に改善
していくことに意味があります。
経営指標は、その数字だけをみていては意味がありません。数
字を通して現場の実態を把握し、どこに問題があり、どのよう
な改善をすることで目標としているビジョンに近づけていける
かという経営者の意思決定を支えていく重要な機能です。
適正な経営を実行していけば、その結果、経営指標の改善とい
う事実が出来上がるだけです。常に、経営の原理原則に則り、
健全かつ頑強な事業を構築していくのが経営者の責務であり、
経理や会計、あるいは経営指標の活用がうまくできている企業
ほど、確実にビジョンへ近づいていきました。