安全衛生面については、行政側のガイドラインが定められ
ています。このガイドラインを守っておけばいいのかといえば、
そうではありません。労働安全衛生法の規定は、最低限のこと
を定めた規定であり、その内容は、安全配慮義務のうちの重要
な部分だけであり、すべてではありません。
ガイドラインに関しては、あくまで安全配慮義務の内容の目安
です。このことから、ガイドライン遵守すれば十分というので
はなく、個別企業において具体的な状況に応じて、労働災害の
発生を防止するため、可能な限りの措置を講じていかなければ
なりません。
具体的には、安全配慮義務違反があるかどうかの判断は、2段
階に分けて考えていきます。
ひとつは、怪我や死亡等という結果が発生したときに、その事
象が予見可能があったどうかということです。予見ができなけ
れば、企業側の責任を問うことはできません。
反対に予見可能性があるということは、事故につながる何らか
の予兆や兆候があるということであり、事故等の結果が生じた
ときに責任の問題が発生するということになります。
次に、予見可能性があるとすれば、その可能性に基づき 、結果
を回避するための具体的な措置を尽くしたかどうかが問われま
す。具体的な対応していない場合、企業側は損害賠償責任を問
われます。
健康診断で問題はなかった場合でも、健康診断だけが予見可能
性を裏付けるものではありません。普段仕事をしているときに
おかしな様子や兆候はなかったか、たとえば、仕事中にふらつ
きがあったとか、気分が悪く短時間でも座り込んでいる状態が
あったとか、従業員の健康上の予見可能性を裏付ける兆候は、
いくらでもあり得ます。
企業側は、従業員がそのような兆候があったとき、具体的にど
のような対応をとったかによって、最終的な企業責任の有無が
問われることになります。
従業員の健康診断を受診させることは企業の義務ですが、安全
配慮義務は、日常業務のなかで従業員の健康状態を把握してお
くことまで含まれています。
中小企業では、健康診断を受診しておれば、安全配慮義務を尽
くしているという誤った認識をもっている場合があり、十分注
意が必要です。