2021年度の決算からソニーは連結決算で適用する会計基準
を、従来の米国会計基準(US-GAAP)から国際財務報告基準
(IFRS)に替えることになりました。
それまでは長い期間米国会計基準を採用していました。
日本では、1978年3月期決算会社からその作成が義務付け
られましたが、日本での実情は、単独決算を重視し、連結決算
の情報開示はほとんど行われていませんでした。
しかし、連結決算は投資銘柄を選択するための重要な投資情報
となるため、2000年3月期から証券取引法(現在の金融商
品取引法)のディスクロージャー制度を大幅に見直し、現在は
連結決算中心の開示になっています。
ソニーでは、米国会計基準を採用していましたから、すでに連
結決算や四半期開示をおこなっていました。
そんなソニーでは、2011年 3月期に営業利益が大幅に改善
されたことがありました。前年の営業利益が318億円に過ぎ
なかったのですが、この年、1998億円まで回復しました。
営業利益が約 6倍増になっています。
ソニーは、この年は米国会計基準を採用していました。前年度
までは大規模なリストラを行っており、退職者の退職金などの
リストラ経費がかかり、営業利益が減少しています。
リストラが一段落し、2011年度はリストラ経費がかかって
いませんから大幅な増益になりました。
ところが、日本の会計基準では、リストラ経費は特別損失に計
上されていますので、日本基準ではリストラ経費が、営業利益
に影響することはありません。
米国会計基準を採用していたソニーでは、リストラ経費を販売
管理費に含めていました。販売管理費というのは、社員の人件
費や事務所家賃、事務経費など、会社の活動にかかる経費です。
ソニーは、この販売管理費の中に、早期退職制度の退職金など、
リストラにかかった経費を入れています。
日本の会計基準では、リストラ経費は特別損失として計上され
ますが、アメリカではリストラは頻繁に実行されますので販売
管理費に計上します。
このように会計基準によって、前年度よりも販売管理費が大幅
に削減されることで日本基準よりも営業利益が大きくなります。
会計には社会性があります。
米国と日本におけるリストラにおける考え方が違うことが会計
まで影響する良い例です。