両建預金とは、銀行等が貸付の条件(見返り)として、借主
に預入させる預金のことを言います。これは、借主に対して
行われる拘束預金の一つで、例えば、5000万円を融資して、
1000万円を預金させるといったものでしょうか。一般に両建
預金は、銀行には預金の獲得や貸付債権の保全、実効金利の
引き上げといったメリットがありますが、他方、借主にとっ
ては、資金の使用制限や金利負担の上昇といったデメリット
があるため、ある地方銀行では、2018年7月金融庁から業務
改善命令が出されています。もっとも、都銀でも結構あるよ
うですが、現在、銀行等の優越的な地位の汎用にあたるとさ
れ、独占禁止法に抵触する不適切な取引として禁止されてい
ます。
両建預金も私たちの時代にはよく聞く話でした。最近はあま
り聞かなくなりましたが、銀行の担当者によっては、こっそ
りやっている可能性があるのではないでしょうか。
例えば、定期預金の金利が0%、貸出金利が2 %だとして、融
資3,000万円、定期預金 1,000万円の場合、銀行が受け取る
利息は年間で、3,000万円×2% = 60万円(途中での融資の返
済はないものとしたとき)。また、銀行の実質の融資額は、
融資3,000万円-定期預金1,000万円= 2000万円。銀行は実質
2,000万円の融資で60万円の利息を得ており、実質金利は、
60万円÷2,000万円=3%です。銀行は本来、利息40万円の利
息のところを、60万円得られています。そのため実質金利が
2%から 3%に上がります。結果として、両建預金は銀行が儲
かります。
将来、企業が返済できなくなったときに、融資を行う一方で
定期預金を作らせれば、銀行は返済不能に陥った企業の融資
と定期預金を相殺することで、融資の一部を回収できること
になります。
銀行というところは、融資のノルマを与えられているようで
す。営業部門であれば、どこも同じようなものかもわかりま
せんが、単に融資2,000万円行うより、定期預金1,000万円
お願いしたうえで、融資3,000万円を行うほうが、融資量は
増額します。このような方法で融資のノルマを達成しようと
するのでしょう。企業が定期預金を銀行にもっているだけで
あれば、企業は、いつでも解約できます。他方、融資を受け
ている企業が定期預金を解約しようとすれば、窓口や担当者
の抵抗にあうことになるでしょう。その他にも銀行が有利に
なる方法があるようです。
企業としては、常に銀行を活用する姿勢が求められます。言
葉は悪いですが、銀行に利用される企業であってはなりませ
ん。ビジネスをフェアに戦うために、自社の本業で堂々と利
益を出しておくことが最良の方法です。
銀行の担当者に「定期預金を1,000万円をしてもらえば、融
資しますよ」と言われた場合、「両建預金をやってはいけな
いと金融庁のコメントが出ていますが」などと言って、無駄
な利息を支払う両建預金付の融資は避けるべきです。
経営体質が弱い企業ほど、銀行担当者のこのような言葉で動
いてしまものです。経営に特効薬はありません。日々の経営
活動をしっかりとやっておきましょう。